住宅ローンの単独名義・共同(共有)名義とは?

住宅ローンでは何千万という大きな金額を借入れます

「一人の収入では不安」「夫婦共同の名義にできる?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。住宅ローンを夫婦や親子など、2人以上で共同で借入れることは可能です。単独で組むよりも大きなメリットが得られます。一方で、返済の仕方によっては贈与とみなされたり、相続時にトラブルになったりする可能性もあるため、共同名義で住宅ローンを組むならリスクへの対策も考えておきたいですね。

【単独名義】1つの不動産に対し、一人の所有者がいる状態です。例えば、夫婦どちらかの名義で住宅ローンを組む場合が該当します。また、夫婦のどちらかが頭金を支払い、その持分割合を設定せず、一人で住宅ローンを組んだ場合も単独名義となります。この場合、頭金を負担した側から住宅ローンを組んだ側への贈与とみなされ、贈与税が発生するため、事前によく検討しましょう。

【共同(共有)名義】1つの不動産を2人以上で所有している状態です。例えば、ペアローンで1つの物件に対し夫婦それぞれが住宅ローンを組んだ場合が該当します。また、頭金を妻が払い、持分割合を設定し、夫が住宅ローンを組んだ場合も共同(共有)名義となります。つまり、夫婦や親子などがそれぞれ負担した資金に応じて、持分の割合を設定した場合が、共同(共有)名義です。

共同(共有)名義で住宅ローンを組むには

ペアローン・収入合算(連帯債務型)

  • # 01

    ペアローン

    ペアローンとは、1つの物件に対し、2人がそれぞれ住宅ローンを契約し、返済をする方法です。契約者同士がそれぞれの連帯保証人となり、団信(団体信用生命保険)の加入と諸費用もそれぞれ支払います。

    例えば、共働きの家庭で夫婦それぞれに一定の収入があり、長期的に返済を続けられる見込みがあるケースにおいて組みやすい住宅ローンと言えるでしょう。一方で、単独で住宅ローンを組むよりも保険料と諸費用がかさみやすくなります。また、配偶者の収入が少ない場合や安定性に欠ける場合には、審査の通貨も難しくなるなどのリスクもあります。

  • # 02

    収入合算(連帯債務型)

    収入合算とは、2人の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。収入合算には、「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類ありますが、連帯保証人は債務者にはあたらないため、共同(共有)名義における不動産の所有者にはなりません。そのため、連帯債務者となって収入合算をする「連帯債務型」が共同(共有)名義となります。

    連帯債務型の収入合算では、ペアローンとは異なり、それぞれが住宅ローンを契約するのではなく、1つの住宅ローンを2人で協力して返済する形になります。団信の保険料や諸費用は住宅ローン1つ分のみ負担することになりますが、団信に加入できるのは主債務者だけであり、連帯債務者は基本的に加入できません。

    団信の保険が受けられないことから、連帯債務者の返済負担が大きいほど、リスクが高くなります。収入合算は、主債務者の収入だけで借入金額のほとんどを補える状態にあり、パートナーの収入もあわせて住宅ローンが組める場合に検討したい方法と言えるでしょう。

共同(共有)名義で住宅ローンを組む
メリット・デメリット

メリット

住宅リフォーム26
  • 住宅リフォーム26
  • 借入金額を増やせる

    住宅ローンを共同(共有)名義で組む大きなメリットは、2人分の収入を考慮して住宅ローンの審査を受けられるため、借入金額が増えることです。借入金額が増えると、返済負担率が下がるため、住宅ローンの審査に通りやすくなります。返済負担率とは、収入に対する住宅ローンの返済額の割合のことです。

    借入金額が増えると、より希望や理想に近い住宅を購入できる可能性もあります。

  • 住宅ローン控除を2人とも受けられる

    共同(共有)名義で住宅ローンを組んだ場合、それぞれ住宅ローン控除が受けられることから、節税効果が高まる可能性があります。

    住宅ローン控除は、住宅ローンの年末の借入残高の0.7%を控除される制度ですが、住宅の種類によって控除対象となる借入残高の上限が決められています。ただし、納税状況によって控除可能額のすべてが減税されるとは限りません。

    もし、夫の単独名義で住宅ローンを組んだ場合、借入金額が控除を受けられる借入限度額を超えているため、損することになります。単独名義よりも、共同(共有)名義で住宅ローンを組み、2人ともそれぞれで住宅ローン控除を受けるほうが、個々の借入限度額金額が少なくなりやすいでしょう。借入残高が控除上限額に達しにくいため、控除の効果がたかまりやすいケースがあることがわかります。

  • 相続の際に納税できる

    住宅ローンを共同(共有)名義で契約すると、相続の際に節税できることがあります。例えば、相続税において2,000万円の価値がある住宅を相続する場合、単独名義の場合は2,000万円に対して相続税が課されます。同じ例をもとに共同(共有)名義の場合は、それぞれの持分のみが課税対象となります。もし1:1の持分割合を設定していた場合、片方が亡くなった際の相続税の対象額は1,000万円となり、相続税額が低くなります。

  • 売却時の特別控除を2人とも受けられる

    共同(共有)名義にすると、売却した際も節税できる可能性があります。不動産を売却して利益がでた場合、一定の条件を満たしていれば、「3,000万円の特別控除の特例」が受けられます。これは、売却で得た利益である譲渡所得から、3,000万円を控除できるというものです。共同(共有)名義の不動産を売却した場合、2人ともそれぞれ3,000万円が控除できます。合計で6,000万円の控除が受けられるため、大きな節税になるでしょう。

    共同(共有)名義で住宅ローンを契約すると、結果的に節税につながることもあります。ただし、相続税や譲渡所得には控除などの制度があり、節税を検討するならすべての制度を把握したうえで総合的に判断する必要があるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

デメリット

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  • 配偶者の収入がなくなった場合も返済が続く

    住宅ローンを共同(共有)名義で組んだ場合、配偶者の収入がなくなった場合も返済が続くことがデメリットです。例えば女性の場合、出産や育児による一時的な離職をして、収入がなくなった場合でも、住宅ローンの返済は続けなければなりません。家計全体の返済負担が重くなるだけでなく、収入がなくなれば住宅ローン控除も受けられなくなるため、節税効果も失われてしまう点にも気を付けましょう。

  • 売却する際に手間がかかる

    住宅ローンを共同(共有)名義にすると、売却する際に手間がかかります。共同(共有)名義の住宅を売却するには、共有者全員の同意が必要です。例えば、夫婦が離婚して一方が売却したいと思っても、もう一方が反対すれば売却できません。説得して同意を得るまで時間がかかり、結果として売却するまでにも時間がかかってしまいます。

住宅ローンは単独名義と共同(共有)名義のどちらがいい?


単独名義が適しているケース

  • # 01

    ライフスタイルが変化する可能性がある

    ライフスタイルが変化する可能性がある場合、単独名義が適しているでしょう。具体的には、出産や育児・介護などで、共働きを解消する予定がある時です。収入が減っても住宅ローンの返済額は変わらないため、家計が苦しくなる恐れがあります。もし、妻の負担分を夫が返済した場合、夫から妻へ贈与したとみなされ、贈与税が発生するかもしれません。今後のライフスタイルを考慮したうえで、名義をどうするか検討しましょう。

  • # 02

    万が一の際のリスクを重視したい

    万が一の際のリスクを重視した場合も、単独名義にするのがいいでしょう。離婚や相続の際、単独名義の方がトラブルを避けやすくなります。「自分たちに離婚は関係ない」と思われるかもしれませんが、内閣府の「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ」によると、離婚件数は婚姻件数の約3分の1となっています。

共同(共有)名義が適しているケース

  • # 01

    借入額を増やしたい

    住宅ローンの借入額を増やしたい場合、共同(共有)名義にするといいでしょう。借入額を増やすことで、住宅の選択肢が広がります。立地や間取りなど、とことんこだわりたい方は検討するといいでしょう。特に収入合算の連帯債務型にすると、住宅ローンの契約は1本のため、諸費用を抑えつつ、借入額を増やせます。

  • # 02

    節税対策をしたい

    購入する不動産が高額であるほど、共同(共有)名義にすることで、節税効果を高められます。もし共働き夫婦であれば、住宅ローン控除がそれぞれ受けられます。住宅ローン控除だけでなく、相続や売却する際にも節税効果があります。

共同(共有)名義で住宅ローンを組む際の注意点

4つの注意点


  • ライフイベントに合わせて適切な返済計画を立てる

    配偶者の出産や育児など、予定しているライフイベントに合わせて適切な返済計画を立てることが重要です。例えば、ライフイベントで一時的に離職するのであれば、離職期間中に返済用の資金を事前に貯蓄しておくことが挙げられます。また、固定資産税や修繕費など、住宅購入後にかかる費用も考慮しなければなりません。将来を見越したライフイベントに合わせた返済計画を立てることが重要です。

  • 夫婦連生団信の利用を検討する

    団信には、共同(共有)名義で住宅ローンを契約する場合のリスクを軽減する制度も存在します。夫婦連生団信は、連帯債務者の夫婦で加入できる制度です。具体的には、いずれか1人が死亡または高度障害になった場合に、住宅ローンの残高を返済してくれます。ただし、この制度は住宅金融支援機構など、取り扱っている金融機関が限られているため、事前に確認しておきましょう。このように団信の種類によっては、共同(共有)名義で住宅ローンを組む場合も保障を充実させられます。万が一の際のリスクに備えたい場合は、夫婦連生団信の利用を検討しましょう。

  • 持分割合は返済負担割合に応じて決める

    登記する際の持分割合は、返済負担割合に応じて決めましょう。なぜなら、登記によっては贈与税がかかるケースがあるからです。例えば、実際の支払い状況は夫が4,000万円、妻が2,000万円の持分割合が2:1であるにも関わらず、1:1で登記してしまった場合は、妻は2,000万円しか支払っていない状態で3,000万円分の不動産を取得したと解釈できます。一方で、夫は1,000万円多く支払っていることから、妻に差額の1,000万円分の贈与をおこなったと判断され、贈与税が課されることもあります。


  • 借り換えの選択肢があることを理解する

    共同(共有)名義で住宅を購入したとしても、場合によっては単独名義へ借り換えたいこともあるでしょう。通常、共同(共有)名義から単独名義への住宅ローンの借り換えは、やむを得ない事情がなければ認められません。しかし、離婚はやむを得ない事情と認められる可能性があり、単独名義の住宅ローンの借り換えができる場合があります。

    共同(共有)名義で住宅ローンを契約する際に、離婚のリスクを最初から考慮して組まないかもしれませんが、万が一の場合は借り換えで住宅ローンを返済する選択肢があることを理解しておきましょう。

住宅ローンは共同(共有)名義で組むことが可能であり、借入金額を増やせるだけでなく、住宅ローン控除などの節税の恩恵を得ることもできます。ただし、配偶者の収入がなくなった時や、死別や離婚によってリスクが高まるデメリットがあるため、これらを理解したうえで組むことをおすすめします。注意点を踏まえたうえで、適切な返済計画を立てるようにしましょう。

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